2011年9月21日水曜日

手結びカメラ






このカメラは、現在わたしの家に滞在しているWALZFLEXという二眼レフカメラです。

『滞在』なぜそのような言い方をしたのかというと、
もともとこれは、父が親しい大切な方から譲り受け手元に置いていた物であり、更に
露出調節のダイヤルが壊れ、使用されないまま実家の暗室で眠っていたものでした。

経緯からして、手元に在るという事自体に価値があり 直して使用しようとまでは
当初、父は考え無かったという事でした。

実家に帰省したある日、わたしはこのWALZFLEXを初めて父に紹介されました。
現状を聞いたわたしは、このカメラを使う父の姿を想像しました。
『直るかもしれない...。』
わたしはそう、口にしていました。その時、そう思えたのです。

わたしのこの確信は、どこから?
それは、一緒にいるパートナーの存在によるものでした。
彼は同じく写真をやっており、それ以上にカメラをいじる事が
好きで、いままでに何台もの古くかわいそうなカメラたちをせっせと治療していました。
そんな姿をわたしは、いつも目にしていたのです。

そうして、このWALZFLEXは海を渡りわたしのもとへと、やって来たのです。

思っていたよりも状態は悪く深刻で、前面を剥がし中から治療してゆくという、
全面的な大施術を必要としました。
家づくりと同様にDIYの精神で工夫や改良を施し、試行錯誤。
そうして、無事手術は成功しWALZFLEXは生まれ変わりました。

ボロボロになった皮張りの顔は、見違えるように新しく若々しい顔へと差し替えられ、
壊れていたダイヤルも軽快に回りだし、奥まっていた二つの目は、いきいきと前後に動き出すように。
すっかり元気になったWALZFLEXはいま、父の迎えを心待ちにしています。

こうしてこのカメラは、リレーのように、手から手へと人を結びつけているのだなぁと、
この晴れやかな顔を見てふっと思うのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿